【AI CROSS株式会社 原田 典子さん】何が起こるかわからない時代、今まで以上に女性の力が必要になる

海外生活が長かったからこそ見えた日本社会の課題

―起業のきっかけとAI CROSSについて教えてもらってもいいですか?(近藤)

海外生活が長く、小中高とドイツで、大学だけ慶應に行き、ドイツの会社に入ったんです。アメリカに行きたかったので、ベンチャーに入ったのですが上手く行かず、いろんな技術のスタートアップと提携して日本に独占販売権を持ってくるビジネスをしていたんです。その時に、副業で富裕層向けにワインを売るっていうビジネスをやって、それが事業を立ち上げた1社目です。

向こうで、結婚して、出産して、日本に帰ってくることになったのですが、帰ってきた時に、カルチャーギャップが相当激しくて、とても働きにくかったんです。
海外にいると、アイデンティティをすごく意識して、日本が好きになるんですよね。もう結婚もしたし、今度は日本に骨を埋めようみたいな感覚になった時に、自分が貢献できることをやりたいなって思って、生産性を向上することで私みたいな女性が、働きやすい国にすることを目的としたビジネスを立ち上げたっていうのがきっかけです。スマートな社会をっていうので、スマートワーク、スマートライフで、ビジネススタイルをスマートにしていき業務を効率化して、アウトプットの最大化を図ることを目指しています。

―もともと起業家になりたいという思いやきっかけはあったのですか?(近藤)

全くないんです(笑)
なりゆきっていうか、自分で全部決めて自分でやるっていうことじゃないと好きじゃないんだろうなっていう思いはあって、リスク取ってやるっていうのが好きなんだろうなっていうのは、後から気づきました。

―2015年に創業して、7-8年で上場されてますが大変だったことや嬉しかったことなんかのエピソードがあったら教えてもらえますか?(近藤)

私、割りと強いんですよね(笑)
生まれが福岡で、それから東京、ドイツ、ニューヨーク、シアトルって、転々としているんです。飽きっぽいのもあるんですが、ずっと同じ環境にいたことがないから、変化が当たり前になっていて、辛いこととか感情の起伏があまりないんです。
もともとそういうのに対応する体質になっているみたいです。(笑)
強いて言うなら、以前の会社で事業を分社化した時に、システムをつくったエンジニア4人のうち3人が辞めて、競合をつくっちゃったんですよね。後から考えるとあの時はしんどかったけど、その時はもう必死でハードワークだったなっていうのはあります。

よかったことは、やっぱりIPOです。
今でも覚えていますけど、メインの担当部長に「できると思わなかった」って後から言われたくらいボロボロだったと思います。
よく出来たなって感じです(笑)
あの時は、ここ数年で一番泣きました。引っ張ってきたナンバーツーがスゴい男泣きしていて、それを見てよかったなって私も泣いちゃいました。

多様性を受け入れることで組織は強くなっていく

―すごくいい話ですね!
 最近は女性起業家も増えていますが、起業家にとって女性だから男性だからってあると思いますか?(近藤)

今はだいぶ男女平等みたいなのありますけど、なんだかんだ女性の負担は多いと思います。
子育てや育児の時間の配分もそうじゃないでしょうか。
女性を贔屓するのは逆贔屓でしょ、みたいのもありますけど「女性なのに頑張ってるよね」とか「女性なのにスゴいね」って言われ続けること自体が、そういうレッテルを貼られてるんだなって思います。

―学生起業家のメリットやデメリットについてどのように思っているか教えてもらえますか。(近藤)

メリットは、あれですよね…無謀というか、若ければ若いほど無茶ができると思います。さすがに今は上場したので、チームをつくって戦略やリスクを考えてやっていますけど、私自身が、考えるより飛び込んでやっていくタイプだったので若い時に経験を積めるっていうのはいいですよね。
あとは100%時間を注げる、家庭とか仕事もないので、そういう意味ではメリットあると思います。

デメリットは、私も日本に帰ってきた時に感じたのですが、見えないマナーみたいなものがあるかなって感じます。
特に、大手との取引とか自治体とか政府とか、そういうところと取引しようと思うと、難しいところがあると思います。
あとは、だいぶ減ったのかもですが、一度失敗するとレッテルを貼られたりとかですかね。

―最後に、欧米の方が男女平等って進んでいるんじゃないかと思うのですが、日本の中で女性起業家が必要なのか、どういうマインドセットをみんなが持ったらいいかってありますか?(近藤)

女性起業家は絶対に必要だと思います。
人口がこんなに減っているのに、女性の労働力を使わないっていうのはないと思います。
これから何が起こるかわからない時代だから、ポテンシャルを引き出すというか、その人の持っているポテンシャルを引き上げた上で、似たような人たち同士より、色んな人が掛け合わさった方が未知のパワーが出てくると思うんです。最初の立ち上げは少人数で、阿吽の呼吸で行けても、大きくしていく中で色々な考え方、人材で多様性を入れるほうが大きくなっていけると思います。

女性がトップでも男性がトップでも、いい悪いはないと思いますが上場企業で見ると、女性のトップは1%しかいないんです。
昔は、お父さんが働いてお母さんは家にいるっていう家庭が多かったので、女性が活躍って頭の理屈でわかっていても、価値観でなかなか変えられないんですよね。
そこは一定の時間がかかるのはしょうがなくて、今の世代の方たちが大人になったらだいぶ変わるだろうなって思います。
色々な価値観の人がいて、子供を産みたい人も産みたくない人もいて、それを社会が許容して認めあえる形になっていくといいかなって思っています。

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【株式会社i-plug 中野智哉さん】運が来るまで諦めずやり続ける

事業内容と、起業のきっかけを教えてください

OfferBox(オファーボックス)という新卒のダイレクトリクルーティングサービスを運営してます。規模でいうと、24卒学生は8月末時点で23万人以上が使っていて、企業も登録が15,600以上です。新卒採用をしている企業が35,000くらいといわれているので、3分の1くらいのシェアを持っているツーサイドプラットホーム事業です。

もともとの経歴は、インテリジェンス出身ということになっているんですが、子会社の歩合の営業だったんです。

在籍中は求人も有料紙からいわゆるフリーペーパーのフリーミアムモデルに変わったりとか、ガラケーからスマホに変わっていってIT化の時代による変化の過程を経験をしました。

ただ人材業界はIT化が遅くて、例えば当時スカウトメールって1通ずつ送ったら、反応率がメチャクチャ高いことを業界にいる人はみんな知っていたんですが、時間がかかりすぎて誰もやっていなかったんです。
あとは当時リブセンスが出てきて、成功報酬という概念を持ち込み瞬く間に上場まで行ったので、自分もITと成功報酬を合わせたサービスで起業しようかなって思ったんです。

実は父も起業家だったので、起業に対する気持ちはずっとあったんですが、まともな大学生じゃなかったんで (笑)
歩合の会社やインテリジェンスも、新卒で入っていなくてその前に10か月ほどニートしてるんで起業と一番遠いところにいました。

でも起業への気持ちだけ残ってて、営業のコツもつかんで仕事漬けの毎日だったタイミングで、リーマンショックとなり仕事が減ってしまったのです。仕事以外にやることがなくなったので、グロービスに行ってから、起業しようって思い、そこから本気で勉強したんです。

グロービスは起業するためにいったんですか?何かきっかけでも?(近藤)

自分は子会社に所属していたので出世の道が狭いんですよね(笑)

当時30歳くらいで、50歳まで死ぬほど売り続けたら上がれるのかな…みたいな感じで…。

グロービスに行って起業をしようと思ってたんですが、当時は人材系だけは未来がないからやらないって決めていました。そんな時にTwitterとかFacebookが出てきて、それに影響されて大学生向けのSNSで起業しようと思いました。

― 起業してから苦労した経験、エピソードを教えてもらえますか?(近藤)

一番恥ずかしいなって今でも思うのは、SNSの事業も結局開始に踏み切らず、日銭を稼ごうと人材紹介を始めたのですが20日で撤退してるんですよ。

うまくいかなかった理由は、お客さんの声を聞いてなかったからですね。机上の空論ばかりで、実際動かないからマーケットフィットしているかどうかもわからず、しかも声を聞くのも億劫になっていました。

その後OfferBoxをやってからは地獄のようにお金がなかったです。大阪府の雇用促進と創業支援の受託事業を受けることができてなんとか食いつなげました。

そんな厳しい間もOfferBoxをやり続けていたんですが、そんな時に神風が吹いて…。

何があったんですか?(近藤)

就活のスケジュール変更があって、選考解禁が後ろ倒しになったんです。アベノミクスやオリンピックで企業の景気はよくなったけど、経団連の指針で大手企業は時期を守らなくてはいけなくなったのです。

その頃に、オファー型も他社が複数社入ってきたんですが、うまくいかなくて全部撤退していったんです。それで数万人の登録希望があるのに誰も居ないっていう空白の市場ができました。

そこでOfferBoxの売上が、その1年で売上10倍になったんです。1,000万が1億に。

それで単年度黒字になって、そこからはずっと右肩上がりです。
就活解禁が遅れたのも、予想していた訳ではなく、ラッキーでしかないですけど、結局は粘って運を引き寄せたのは、諦めなかったからなんです。

― 学生起業家に話しを戻すのですが、学生起業家をどう見ていますか?(近藤)

起業したいと思っているなら、早く挑戦したほうがいいと思ってます。

社会人経験やスキルは後からでも学べるけど、運はいつ降ってくるかわからないですからね。自分はひと通り失敗して、33歳で起業して、3年くらいで運にぶつかってるんですよ。とても運がいいでしょ(笑)

運は、誰にでもくるんですよ。気づくかどうか。

気づき方はね、なんでもいいと思うんですよ。10年とか守り続けるように続けていたら何か感じるものができるような気がしてます。
自分は3年前から毎週2時間、思考の整理っていう時間を取って、Slack、LINE、メッセンジャーをオフにして、何かテーマを決めて考えるというのを3年ぐらいやっています。そうすると自分の中でフラットなところができて、変化に対して敏感になりやすいんじゃないかな。

運って偶発的なんで、本とか論理的に整理された情報の先には絶対ないです。いろんな人に会うとか、行動して偶発的な出会いとかが運に繋がったりする。こういうことをやったらいいってことを真に受けてやり続けると、偶発性がどんどん削れていくので、自分のルールで決めたものをずっとつき詰めていくと、運にも出会う確率が上がるかもしれないと思います。

学生起業がブームですが、彼らに向けた応援とかメッセージを頂きたいと思います。(近藤)

学生起業がブームって言っても、まだまだ滅茶苦茶レアキャラですよね。物事を成すのが好きな人もいるし、単純にお金持ちになりたいとか、憧れが欲しいとかモテたいとか色々あるけど、突出したものになりたいっていうのは、多分一緒だと思うんですよ。そのなかで成功するには逆張りしかない。

あとは資産を形成するとか、みんなから承認されるとか、やりがいを持つとかって起業すると経験できるのは間違いないです。確かにリスクも伴いますが、学生のうちに経験する価値がそれ以上にあると思っています。
チャレンジをしたい人であったら、ぜひ挑戦して欲しいですね。

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【Branding Engineer 高原克弥さん】常に自分が最高のパフォーマンスを出せる状態にいることが大事

いつかは起業したいと思っていた、共同代表である河端保志氏との出会い

ー起業を志したきっかけを教えてください

小学生の頃、父がカメラマンでした。父は撮影をすることは得意だけど編集が苦手で、撮影した写真のレタッチを家で手伝う機会があったんです。いろいろ教えてもらいながらAdobeの Photoshopを触っているうちに、自分でウェブデザインがしたいと思うようになりました。最初はゲームを作ろうと思ってPerl(パール)という言語を使っていて、中学生の頃は自分で作ったゲームをずっと運営していました。300人ほどユーザーがいて、常時40~50人くらいログインしているような感じでしたね。

―中学生で!?すごいですね…!(近藤)

中学生の時はあまりお小遣いをもらえなかったので、お金がほしくてバイトをしようとコンビニに電話をかけたりしました。もちろん、中学生はバイトすることができないので断られて(笑)。そこで、ネットで稼ぐしかない!と思ったんです。ゲームの方はサーバーの問題で300人くらいまでしか人を集めることができなかったので、それでは商売にならないと思って掲示板のようなものを作りました。内容としては、音楽情報サービスのようなものです。それが結構伸びて、中1から初め高3まで月間200万PVほどになり、アフィリエイトや広告収入でまあまあ稼いでいましたね。

―まあまあどころじゃない気が(笑)。高校生にしては大金ですよね!

はい、社会人の何倍とかのお金になって「これはもう人生勝ったわ!」って思ってました(笑)。しかし、大人の圧力でそのサイトは閉鎖することになって…。競合のサービスをやっている会社が本気で圧力をかけにきて、当時高校生であり、対抗する知識がなかった自分はメンタルが崩壊するレベルに追い込まれました。結局、やむをえずサイトは閉鎖することになりました。このことがきっかけで大学は法学部に進学しました。でも大学に通う頃にはサイトも閉鎖していたので目的を失っていて、弁護士になろうとか教師になろうとか色々やってみましたがどれもしっくりこなくて、サークル活動に明け暮れていました。

 そういった生活を送ったあと、大学3年生の頃に家入一真さんの講演を聞いて「このまま大学生活をただ過ごすだけでは負けてしまう!」と感化されたのをきっかけに、3社ほどの手伝いを始めました。しかしその3社が順番に倒産してしまって全部ダメで。そこで、「次はもう自分でやるぞ!」と思い起業したのが今の会社です。もともとどこかのタイミングで起業しようとは思っていましたが、いつするかなどは考えていなかったです。ですが、大学4年生のときに共同創業者である河端と出会って一緒に起業しました。この、「起業しよう!」というのが1月くらいでお互い就職活動を終了して企業から内定をいただいていた後だったため、内定先にも謝りにいきましたね。

―内定を蹴ってまで起業しようと思った決め手はなんですか(近藤)

河端と会ったタイミングですかね。起業しよう!と思った時に、僕は営業をしたことがなかったので営業ができる人を探していました。それで、河端に営業をやってくれと頼むと「俺も起業しようと思っていた」と言われて一緒にやろうとなったんです。

―起業して今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

上場したことはやっぱり嬉しかったです。

―半袖短パンで撮っていた写真が印象的で覚えています!(近藤)

創業したときから上場したら半袖短パンで写真を撮ろうと決めていました(笑)。上場準備期間が大変だったからこそ、上場したときは本当に嬉しかったです。会社でいうとその3年間は創業以降最も成長しなかった3年間でしたし、競合も多い歴史ある業界だからこそ大変でした。それもあって、「もし、上場できなかったら一生後悔する3年間だね」と言っていたくらいでした。だからこそ、それが叶った日というのは感慨深いです。

  辛かった出来事は、2期目の終わりに一度組織が崩壊したことです。ちょうどその時、創業期からずっと展開していた受託開発をやめて、ビジネスモデルを切り替えるタイミングでした。僕らのマネジメント不足でインターンや業務委託の30人くらいが全員やめてしまい、インターン生1人と僕と河端の3人になりました。河端との関係もそのときが一番ギクシャクしていたと思います。信頼はあるけれど、「これからどうする」や「お前もやめないよな」という不安も、言葉にこそしませんがお互い感じていましたね。

共同代表だからこそできる自分が最高のパフォーマンスを出せる状態作り

―高原さんが考える、起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

とにかく起業家の精神が安定していて、大きなリターンを得られるチャレンジに状況を持っていくことができるかが大事だし、常に「もし、それができないなら就職したらいい」と頭に置いておくのもいいと思います。常に自分が最高のパフォーマンスを出せる状態を作るというのは大切にしたほうがいいです。

―その状態が作れるのは共同代表だからこそというのもありますか(近藤)

 ありますね。人間なので弱気になるときはあるけれど、2人で同時にダウンすることはほぼないです。どっちかは「どんどいこう!」という状態なので、弱気になっている方に「ダメじゃん」と声をかけることで僕らは目覚めることができます。僕たちは、友達としてめちゃくちゃ仲がいいわけではなく信頼し合ったビジネスパートナーだからこそ仕事のパフォーマンスが、よりはっきりと見えます。

―プライベートに介入しすぎないからこそ、お互いの仕事での姿がよく見えるんですね。(近藤)

ー学生起業家のメリット、デメリットはなんだと思いますか

環境がいいのは大きなメリットではないでしょうか。僕らが起業した時と比べると、最近はサポートしてくれる人や投資してくれる人も増えたし、優秀な人が評価されやすい環境になっていると思います。だからこそ、自分の強みを活かして自分のいくべき方向を見誤らなければ、学生起業家でも成功しやすいのではないかと思います。

デメリットはやはり就労経験がないことですかね。ビジネスマナーや社会、ビジネスについて知らないために危ないこともあったと僕の過去の経験からも思います。リビングデッドしやすく、個人勝ちしやすい環境になったとも言えるのでそこは気をつけないといけないとも思います。

―ここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

もちろん、起業すべきだと思います。学生起業は、先述した通り環境も良いし合理性があります。もし、失敗したとしても自分自身の価値は上がると思うので攻め続けられるのであれば絶対やった方がいいです!

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【株式会社タイミー代表 小川嶺さん】後悔なく「自分はしっかり世に貢献できたな」と思えるように

日本のためになれる起業家になりたい、学生起業を志すまで

―起業を志したきっかけを教えてください

高校3年生で生徒会長になり、初めてリーダシップをとることを経験しました。予算をどのような企画に当てるのか考えたり、自分の持分のお金を何かに投資してそのリターンを得たりという体験をしてみて、すごく楽しいと感じました。予算配分以外にも、文化祭の来客数をどのようにして増やすのかを考えて、実際にそれを実行したら来客数が1.5倍になったこともありました。このときは、純粋にアイデアを出したり企画したりするのが楽しいと思ったんです。

当時から日本政策金融公庫のビジコンに出場もしていて、結果は3600件くらいの応募の中で20位くらいでしたね。そのとき僕は全国生徒会連盟に所属して活動していたこともあり、絶対優勝できる自信があったのでとても悔しかったです。当たり前なことだけれど「自分より優秀な人っていっぱいいるんだ」という気づきをそこで得ました。でも、このとき優勝できず悔しい思いをしたからこそちゃんとビジネスを勉強しようという気持ちになったので、今思えば優勝しなくてよかったです。

ビジコンに参加したのが高校3年生で、その年の冬に祖父が亡くなってしまいました。祖父のことをとてもリスペクトしていたので、祖父の生い立ちなどを聞き、曽祖父が牧場を経営していたことを知って、自分には実業家の血が流れているんだと思いました。その後、牧場はなくなってしまったのですが、もう一度小川家を復活させたいなと思ったのが起業のきっかけです。ただ小川家を復活させたり、有名な起業家になるのではなく日本のためになるような起業家になりたいと思いました。

大学に入学してからはサークルにも入らず、経営学部の300人全員に会って一緒に起業する仲間になってくれそうな人を探していました。でも、全然見つからなかったんです。そこで、自分で起業家育成団体を作りました。40人くらいで小さいビジネスをしたりしましたが、社会も知らないといけないので何社かインターンを経験して、その後に起業をしました。

ー高校3年生の1年間が濃い!起業に繋がる出来事が色々重なったんですね。(近藤)

―起業して今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

2018年8月にリリースして4ヶ月しか経ってない中で、3億円を資金調達できたことは嬉しかったです。VCにはだいたい断られて、残り1ヶ月でキャッシュアウトするくらいの時期で辛かった中、藤田ファンドに選ばれたことで生き延びることができました。だからこそ、あの3億円はインパクトがあった一方で、会社としてはぎりぎりの戦いをしていたと今考えると思います。このときの調達できた理由として、世の中に必要なサービスだということをとにかく訴え続けたことがあります。実際に自分で飲食店などに話を聞きに行き、ブラックバイトや過労死など現場で起きている課題を妄想や仮説ではなくリアルに伝えることで評価を得られたと思います。

―あのときの資金調達は課題解決の熱意を伝え続けることの集大成だったんですね!(近藤)

大変なことといえば、創業期に記者会見まで用意したのにアプリリリースが間に合わなかったことですね。いろいろ投資をして30社くらい記者も呼んで会見の準備は万端だったのに、その日にアプリがリリースできず管理画面を見せて「こういうイメージです。」といった発表になりました。アプリをリリースした後もクライアントやユーザーが少なく、うまくマッチングできないことがありました。ユーザーとのマッチングができなかったクライアントへは自分達が働きに行ったりもしていましたね。それにまだネットバンキングもなかったから、ユーザーに対しての支払いは自分で朝銀行に行って手作業で振込作業をするなど、当時の起業家生活は想像と違ったけど、いま思えば青春だったと思います(笑)。

早く見つけて、早く挑んで、早く失敗する。これこそが学生起業家のメリット

―小川さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

松下幸之助先生のようになりたいと思っています。世のため人のために働く、お客様第一の心というのは一生崩れてはいけない。自分のお金儲けよりも、死んだときに「自分はしっかり世に貢献できたな」と思えるようになれるかが起業家としての第一歩目だと考えています。起業家は何段階もステップがあって、それを超えるエネルギーを持ち続けないといけません。そのエネルギーの源になるのが世のため人のためであったり、自分のやりたいことと繋がっていることが重要だと思いますね。

※松下幸之助(まつしたこうのすけ)ー1894年11月27日〜1989年4月27日。日本の実業家であり発明家で、パナソニックホールディングス(旧社名:松下電気器具製作所、松下電器製作所、松下電器産業)を一代で築き上げた経営者。

―学生起業家のメリット、デメリットはなんだと思いますか

早いうちから行動できるのはとてもいいことだと思います。人生かけて挑むビジネスを早く見つけて早く挑んで早く失敗する。失敗してもそれを振り返ることができるのは、早くから行動したからだと思います。もうひとつは、無知の知。いい意味で業界や仕組みを知らないからこそできることがあるので。どんどん挑んで自分が考えていることを形にしていくべきだと思います。

デメリットは天狗になってしまうこと。お金も集まってくると、自分がかっこいいと思っちゃうんですよね(笑)。これは過去の自分に言いたいことでもあるけど、お金のありがたみを改めて知るべきだと思います。ファッションで資金調達するのではなくて、本質で頑張っていくというのが大切ではないでしょうか。

―ここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

世のため人のために自分が何をしたいかが見つかったタイミングで起業するべきだと思うので、急いで学生起業家になる必要はないです。やりたいことが見つかった時にやればいいと思うし、今それを見つけているのであれば全力でやり切ってほしいと僕は思います。

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【株式会社エアークローゼット天沼聰さん】謙虚にして驕らず、常に学ぶ姿勢を持ち続けたい

35歳で起業、社会人経験を経てからの起業に至るまで。

ー起業を志したきっかけを教えてください

元々、起業じゃないとダメだと強く思っていたわけではないです。海外の大学に通っていて、インターンなどもしていなかったので学生の頃は社会人という存在を遠く感じていました。大学を卒業してロンドンから帰国したときに将来何をしようかと考え、チームスポーツや仲間と一緒に何かをするのが好きなので、もしかしたら起業という選択肢もあるかなとおぼろげながらには思っていました。同時に、社会人って何をやるのかわからないし、スキルもないし、性格上緊張しいだから社長っぽいことはできないとも思いました。

起業だとしても、会社の中でのリーダーだとしても、リーダーシップを発揮して仕事をするスタイルは自分のなりたい姿だったので、それを身につけたいと思ったのが最初です。人前でかっこよくプレゼンをしたり、プロジェクトを管理したりリードできる人になりたいと思い、その経験を得ることができる仕事を考えた結果コンサル会社に就職しました。その後、10年近くコンサルファームで仕事をして、その間に起業しようという思いが強くなりました

 働いている中で、チームで仕事をするのが楽しいと実感し、自分達が本当に大事だと思うことをチームで進めていくという起業をしてみようと思いました。それもあり、エアクロの創業メンバーは私含め3人ですが全員コンサル時代のチームの仲間です。

コンサル時代に起業しようとは思ったものの、この時すぐには起業せず一度転職しました。起業した後のことを考えて、0→1はできたとしても1→100にするなど実業家として会社を大きくしていくのに必要な経験が足りないと思ったからです。具体的には3つあって、グローバルな経験を得ること、多種多様な人と仕事をすること、組織づくりを学ぶこと。これらを学びたいなと思いました。そう思っていた時に偶然にも楽天の求人があることを知り、転職しました。3年くらい楽天で色々なことを経験した後に35歳で起業しました

感染症の拡大からよぎる「サービスが悪になるかもしれない」という不安

ー起業してから今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

大変だったことはコロナですね。経営者としてもすごく考えさせられたし、事業としても苦戦しました。事業としては、ファッション業界には大打撃でしたね。外出しないからおしゃれをする機会が減る、そうするとお洋服を買うことが少なくなる、という感じでコロナの1〜2年で市場が十数%下がったんですよ。これって結構あり得ないことで、業界にとってのダメージが大きかったですね。

経営者としては、未知の感染症が拡大している中でお洋服のシェアリングというビジネスを継続していくことが本当にお客様のためなのか?ということにとても悩みました。もしシェアをすることによって感染症の拡大に繋がってしまったら、本質であるお客さまの幸せや感動体験のための事業とは逆のことが起きてしまいます。サービスがお客様にとって悪になるかもしれないというのは今まで一度も考えたことがなかったので、事業をどうしていくべきかの部分も含めて意思決定することが多くなりました

印象に残っている出来事は、サービスをつくって最初の資金調達をEOの仲間でもある寺田倉庫さんからしたことです。サービスのことを考え、倉庫会社さんとお仕事をしたいと思ってさまざまな会社に当たっていましたが、ひたすら断られていました。返却されてくる想定がなかったり、個品を管理することができなかったり、倉庫会社さんのシステム的に一緒にやるのが難しいのはわかっていました。そんな中、寺田倉庫さんは「一緒に業務フローから考えていこう」と言ってくださいました。初めは業務委託の予定でしたが、会長さんと社長さんに興味を持っていただき「会ってみたい」とおっしゃってくださいました。社長さんと会長さんとのランチでサービスと世界観に共感してもらうことができました。その時に、「サービスが回り始めて、世の中やお客さまの反応を見るのに1年間でかかる費用をうちが全部出すから、作りたい世界を見せてくれ」と言われたことをよく覚えています。

―めちゃくちゃかっこいいですね(近藤)

そうですよね。本気でサービスを作りたいと思っていて、サービスができた時の世の中に対する熱量と貢献したい心に対して、ちゃんと応援してくれる人がいるのだということを実感しました

絶対的な正しさは存在しないから常に学ぶ姿勢を持つことが必要

ー天沼さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

これは、僕が個人的に大切にしていることですが、時間を完全燃焼させたいということ。時間というのは、すべての人が平等に持っているもの。だからこそ、個人によってその瞬間の価値を変えることができるものだと僕は思っているので、すべての時間を自分が最高だと思える時間にしたいと考えています。

経営者としては、「謙虚にして驕らず」が一番だと思います。僕はすべての人がメンターだと思っています。これは海外経験から強く感じたことですが、すべての人が価値観も違えばバックグラウンドも違う。だからこそ、主観で見たらすべての人の考え方も価値観も正しいじゃないですか。そう考えると、絶対的な正しさっていうのはないですよね。正しさがない以上は自分自身が「この方がいいだろう」と思う正しさを晒し続けることが必要だと思います。そう考えると、これは素敵だなと思ったものは常に取り入れるようにしないと自分の成長が限られてしまう。人ベースで考えるのではなくて、どんな人からも学ぶことができるから、いつも学ぶ姿勢が必要だと思っています。だから、できる限り学びの機会を増やすというのは大事なんじゃないかと思います。

ー学生起業家のメリット、デメリットはどんなところだと思いますか

メリットは経験できる年数が多いことです。経営者としての年数が長いことは自分の立場から見ても羨ましいなと思います。早くから始めることでたくさん経験を積めるのと、最初のサービスでミスに対して過保護になりすぎなくていいのはとても強いと思います。例えば、私のように35歳で起業するとして、そこから数年または数十年試行錯誤するとなると人生上少し遅くなってしまいますから。そう考えると、なんでもできる時間の強さは羨ましく感じます。

一方で、組織作りとか社会人としてのノウハウがあまりないことはデメリットだと思います。メールのコミュニケーション、先輩との関わり方、営業についてなど社会人としての経験があるからこそわかることやできることもあると私自身実感しているのでそこはデメリットになってしまうかなと思います。

ーここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

僕は、自分が自信を持つまでインターンやスタートアップで先に経験を得ることをおすすめします。「何歳までに」とかの期限を決めたり、時間で考えたりするのではなくて、自分の状態で起業を決めるのがいいと思います。僕自身、自分が思っている地点に到達するまでは経験を積むことや学ぶことが必要だと思うタイプなので。それが学生のうちにできているなら学生から起業するべきだし、時間がかかるなら社会人になってもいいと僕は思います。

―なるほど!なりたい状態を先にあげて解像度を高めていくというのは確かにいいですね!(近藤)

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【ガイアックス スタートアップスタジオ佐々木喜徳さん】スタートアップとは、当たり前のことを当たり前じゃないやり方で解決するもの

フリーランスからガイアックスへ、そしてスタートアップスタジオの責任者に

ーガイアックスでのキャリアの経歴を教えてください

 ガイアックスには2007年ごろにエンジニアとして入社しました。当時ガイアックスは上場したばかりで、これから自社サービスをどんどんやっていこうというタイミングでした。その時のガイアックスのメイン事業はクライアント向けのSNS構築と運用の受託事業だったので、そこでインフラの構築や保守などエンジニアとしての業務をした後に、社内スタートアップ事業の挑戦を経てスタートアップスタジオの責任者に就任しました。

ー フリーランスからガイアックスへ、入社を決めた理由はなんですか。

 フリーランスの時は本当にフラフラしていました(笑)。ときには零細企業の役員になって会社を立て直したり、小さな芸能関係の会社の立ち上げメンバーとして活動したり、興味だけで生きていました。ガイアックスは学歴の強い人たちが入るイメージだったのに対し、僕はほとんど学歴がなくて。当時の派遣会社の担当の人に「多分、佐々木さんとガイアックス、合うからいってみれば?」と言われて面談に行き、まずはエンジニアの派遣社員としてガイアックスに潜り込みました。その時に「なんでもやらせてもらえそう」というのを感じました。僕はなんでも自分からやりたいタイプなので、そこで面白そうと思ったのが決め手ですね。

ー当時から自由な社風だったんですね!(近藤)

 はい。実際入社して思ったのは、とにかくサークルっぽい!僕はその時25歳くらいだったのですが、ガイアックスの社員は20代後半の若い層がメインで、同世代が多いこともあり、会社自体のノリに仕事感があまりなかったです。

ーそのノリとか雰囲気ってどこから感じたんですか?(近藤)

 最初に任されたプロジェクトが、社長と僕ともう1人の社員の3人で社内のCRMを改善するというものでした。上場企業の社長が、エンジニアの僕と一緒に解決方法や何を実装しようか、というのを普通にディスカッションしているってめちゃくちゃ面白いじゃん!と思ったことですかね。

※CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客と良好な関係性を築き、継続していくための施策やそれを実現するツールやシステムのこと。

ーいい意味でめちゃくちゃフラットだったんですね!(近藤)

「教えてあげているというより、共同創業者」として向き合う

ー   佐々木さんの思うスタートアップスタジオのいいところはどんなところですか

 スタートアップスタジオというのは、どうやって事業化していいかわからないアイデア段階のものを僕たちがリソースもお金も使って支援していくというものです。プレシリーズAとかシリーズAで、VCやCVCなど外部の投資家から資金調達ができる状態になるまで支援することに取り組んでいます。

 スタートアップスタジオの特徴は、実際に僕たちがリソースをかけて支援することです。例えばいいアイデアになるまでに事業検証が必要であれば、検証費用を出してあげる。いい事業アイデアに辿り着いたら法人の登記もしてあげるし、投資もします。会社を経営するために必要な経理や財務などの管理部機能も支援し、プロダクト開発が必要であれば無償でMVP開発もやっています。

ーお〜!教育機関に近いかんじですかね?(近藤)

 まさにやっていることは起業家教育ですね(笑)。事実、起業家を育てているけれど、僕たちのスタンスとしては「教えてあげているというよりも共同創業者」という感じです。全員が起業にたどり着くわけではないし、バリューアップするというのはもちろん難しいと思っています。ただ、挑戦する土壌が大事だと思っていて、「たくさん失敗するためにスタートアップスタジオを使っている」という考え方で挑戦したほうがいいんじゃないかと思っています。つまり、なるべく早くたくさん失敗して成功する事業にたどり着くための支援というのが僕たちのやっていることですね。

圧倒的な行動力で大人や社会を巻き込む力が大事

ー   ​​佐々木さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」は何だと思いますか。

 いくつかあると思いますが、1つ極端な言い方をすると、「ちょっと頭おかしいかどうか」(笑)。当たり前を当たり前にやってもスタートアップじゃないなと思っていて、当たり前のことを当たり前じゃないやり方で解決するのがスタートアップ。一般常識から逸脱した考えができるかどうかというのは重要だなと思っています。

ー固定概念がないってことですね!(近藤)

 そうそう。表現方法はいろいろあるけれど、僕が好きな表現でいうと「ネジが外れている」「リミッターが壊れている」という感じ。あとは、圧倒的に行動力が必要。スタートアップは一次情報からいかにして事業を作るかが全てだと思うので、その一次情報を集めるのに行動力や行動量が必要だと思いますね。

ー実際に佐々木さんが支援をしたいと思う人や事業はどのような人や物ですか

 人のコミュニケーションや人の繋がりを作る場、人の繋がりから課題を解決しよう的な事業アイデアが大好きですね。だから、こういう事業アイデアを聞くとよだれが出ちゃう(笑)。

ー起業を目指す若手の支援をしていますが、支援をする中で心がけていることや思いなどありますか

 教えるコンテンツやフィードバックが本物かどうかというのはかなり意識しています。学ぶためとかじゃなくて、それが本当に事業アイデアを考えるプロセスなのか。何が良くて何が悪いのかの判断は、事業がうまくいくかどうかを基準にフィードバックすることを意識しています。起業ゼミでは中高生に教えたりもしているので、ついてこられなくなる子が出てくるときもあります。その際は、ついてこられない子のケアを学校の先生に実施いただきつつ、僕たちはついてくる子たちに本気で本物のフィードバックを続けるように努めています。

ー良いコンテンツのためにフラットに接するということですね。(近藤)

ー起業している学生にアドバイスや何か一言ありますか

 学生起業家は、固定概念がなくて柔軟な発想があるのが最大のメリットです。逆にアセットがないのがデメリット。でもそれはトレードオフだと思っていて、その持ってないアセットをどう補完するかが重要じゃないですかね。そして、補完するためには、いかに大人や社会を巻き込めるかという巻き込み力が重要だと思います。大人側としては、学生起業家を応援したいと思っている人はたくさんいるから、臆せずにどんどん接触していって巻き込んでいってほしいですね。

ーここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

 学生かどうかよりも、早いか遅いかの話だと思います。起業とか事業作りは経験の積み重ねによって成功確度が上がっていくはず。なぜなら、学びがあるから。そこから考えると、「起業したいな」の段階で出来るだけ早く挑戦したほうがいいと思います。そうすれば早く失敗して、早く学ぶことができるから成功確率の高い事業に挑戦できる打席が増える。つまり、学生だからというよりも早く挑戦した方が成功確率は上がると思います。あとは、学生だと失敗しやすいしダメージが少ないんじゃないかな。

ーたしかに。結婚したり、家庭を持ったりするとリスクのことを考えないといけないですもんね。(近藤)

 はい。結果、学生起業はメリットしかないと僕は思います。

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【さくらインターネット株式会社 田中邦裕さん】計画通りじゃなくても、面白い人生を送りたいのなら起業した方がいい

東京のインターネット体験コーナーで受けた人生で1番の感動

ー起業を志したきっかけを教えてください

 そもそも、最初は起業することは考えていませんでした。僕は”高専”と呼ばれる5年間通う技術系の学校に通っていて、3年生のときに「インターネットすげえ!」となって自分でサーバーを立ち上げてホームページを作りました。学内の友達のホームページを作ったり、友達のホームページを自分のサーバーに置いてあげるようなこともしていました。そんななか、学校のインターネットがグローバルに繋がるようになり、急に学外や国外からアクセスされるようになったんです。18歳のとき、東京のインターネット体験コーナーに置いてあるコンピューターから、舞鶴高専にある自分が立ち上げたWebサーバーにアクセスすることができたことに強烈に感動しました。これはもう通信とかコミュニケーションがガラッと変わるなと感じました。人生においてこれを超える感動はないと思いますね。

 しかしこのサーバーは勝手に立ち上げたものだったので、学校からクレームがはいってしまったんです。撤去しないといけない状況になったものの、「お金を払ってでも使わせて欲しい」というユーザーが出てきて、学外にサーバーを置かせてもらうことになりました。それまでは学校内に勝手に置いていたので無料でしたが、ちゃんと地元のプロバイダに置かせてもらうようになり、サーバー代などお金がかかるようになりました。このときは登記せずに個人事業主でやっていましたが、この出来事が起業のきっかけです。

ーなりゆきで起業したという感じですかね。(近藤)

 なりゆきですね。起業って目的として行う人と手段として行う人がいると思うのですが、私の場合は手段としての起業でしたね。

―起業して今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

 嬉しいことはたくさんありますが、上場した時の鐘をみんなで鳴らしたことは印象に残っています。鐘は5回鳴らすことができるのですが、そのときにいた20〜30人を何人かずつに分けてみんなで鳴らしました。

ーめちゃくちゃ素敵ですね!(近藤)

 自分1人でやっているわけではなくて、みんなでやっているものなので、鐘もみんなで鳴らしたかったんです。上場って憧れたり目指したりするものでもあるけれど、上場したことがすごいというよりも、みんなでこの通過点を祝おうという感じでしたね。

 サーバー事業はどんどん新しいものが出てきて、ライバルも多いので戦略や戦術をたくさん変えてやってきました。大変だった思い出だと、ネットバブルが弾けて各所にお金が払えない事態になったことがあります。給与すら払えない状況でした。とにかく申し訳なくて、なんとかしようと思って開発した専用サーバーというサービスがぐっと伸びてなんとか事なきを得ました。

―田中さんが考える、起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

 人生において、コピーされないものの価値というのはすごく重要だと思っています。人脈は基本的にコピーされるものではないからそこに含まれると思っていて、そういう意味ではとても重要なことだと思います。あとは自分の熱量。これもコピーされないものですよね。そう考えると若いうちから始めるからこそ育成できるのって人脈なので、起業するのであれば人脈は大切にした方が良いと思います。

広い世界から俯瞰して見ることで気づきを得ることができる

ーGSEAのテーマが「誰よりも世界で勝負する経営者になる」なのですが、若いうちから世界をみることの大切さはなんですか

 僕は30代になってから海外に行くようになったのですが、10代とか20代のもっと若いうちに海外にたくさん行けばよかったと思います。やっぱり、大きな世界から中を俯瞰して見ることは大事なので。僕はネットワークを通して世界を広げることはできるけど、もっと広い世界を見ていくべきだと思っています。シリコンバレーなどに行くと規模感の違いを実感します。世界を見ると改めて、精緻に作り込んでいくことと広げていくことのバランスを取ることは重要だということを感じさせられます。

ーどれくらいの視野から自分や事業を見るかというのを若いうちに経験した方が良いということですね!(近藤)

 そうですね。そうすることで人生に深みが出ると思います。

リスクは少ないから、面白い人生を送りたいなら起業するべき

ー学生起業家のメリット、デメリットはなんだと思いますか

 若いときの方がやっぱりちやほやされますね(笑)。自分の芯をしっかりと持っていれば埋もれにくいし、リスクも少ないと思います。養う人がいなければ、5〜6万円あれば暮らしていくことはできるじゃないですか。だから、そういったお金の心配も少ないことは良い点ですね。失敗した時のリスクが少ないからこそ、どんどん挑戦できるのはメリットだと思います。

 デメリットは、世間を知らなかったり人脈があまりないこと。今だったら、「この経営者に相談したい!」と思ったら誰かしらのツテで相談することができたりしますが、学生のときはそうもいかないのでそこは大変かもしれません。

―ここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

 就労経験に関わらず、すぐに起業していいと思います。お金がなくても起業はできるからどんどん立ち上げていった方がいいと思うし、就職と起業は別に対局にあるわけではないから、起業した後にどこかに就職するのもいいですよね。起業してその会社に勤めるのもいいし、「起業してこういう経験をしています」というのを就職試験で話すネタにするのも別にいいんじゃないかと思います。

ーたしかに、起業と就職は対局に考えられがちですね(近藤)

 自分がどういう人間かは考えた方がいいですけど、大企業で安定的に暮らしたいと思う人以外は起業した方がいいと思いますね。計画通りに人生を送りたいのか、計画通りじゃなくても面白い人生を送りたいと思っているのかを考えたときに、計画通りじゃなくても面白い人生を送りたい人であれば起業した方がいいのではないかと思います。誰にでも起業を薦めるというわけではなくて、そういうタイプならば起業の道もあるというだけの話です。

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【株式会社レアジョブ 中村岳 × 株式会社Unito近藤佑太朗】学生起業家ブームについて。起業家の心得とは? GSEA運営対談

ープロフィール

1980年生まれ、東京都出身。開成中高を経て、東京大学・大学院へ。情報理工学を専攻。その後NTTドコモに入社し、次世代通信の研究を行う。エンジニアとして働くなか、個人と個人をつなぐ新しいビジネスの立ち上げを考案。中高の同級生である加藤智久とともに、2007年にレアジョブを共同創業。2015年、代表取締役社長に就任。

ープロフィール
1994年生まれ。株式会社Unitoの代表。幼少期をルーマニアで過ごし、小学1年生の時に日本に転校。明治学院大学に入学し、国際交流活動を行う学生団体NEIGHBORを創設。その後クロアチアへ留学し観光と経営を学び、宿泊事業を行う株式会社 CARAVAN JAPANを創業。国内外含めて7拠点に広げるが、2020年1月に5社に5事業を分割売却。2020年2月「帰らない日は家賃がかからない家 unito(ユニット) 」をリリースし、それに伴い社名も株式会社Unitoに変更している。

ー中村さんの起業家としての心得は?

近藤さん(以下敬称略):岳さんの起業家としての心得についてお聞きしたいです。

中村さん(以下敬称略):僕が一番大切だと思うのは「諦めないこと」です。起業をしていると上手くいかないことがたくさんあるので、心を折らずに諦めないことがとても大事。成し遂げたい未来に向けて一歩ずつ学習しながら歩み続ければ、いつか必ずたどり着くから。諦めないことが起業においての心得ですかね。

近藤:「諦めないこと」は、周りの起業家でも言っている人が多いです。諦めないで、失敗も含めてたくさん経験を積む。経験値の積み重ねこそが、起業家にとって大事。だからこそ、早く起業をするという選択肢もありますね。

中村:そして「起業」からもっと大きくなるタイミングでの心得は「起業家自身がどんどん変わっていく」こと。どんどん変わっていかないと、会社は大きくなっていかない。起業家として役割を一歩ずつ変えていき、「起業家」が「経営者」になることが成長の鍵だと思っています。

ー近年の学生起業家ブームについて

近藤:岳さんは就職をしてから27歳で起業をしましたが、今の学生起業家ブームについてはどう思いますか?

中村:今の学生起業家ブームはすごくいい流れ!優秀な人にはどんどん事業を起こしてほしいと思う。僕は学生起業ではなく、NTTドコモに就職をしてからの起業でした。就職をしてからの起業で良かったなと思うのは、「正解」を知ってから起業をできたこと。成功している大きい企業で働くと、1つの正解例を知ることができるんです。他にも、人事制度や福利厚生など、制度面でも勉強になることがある。自分達で起業をして0から会社を作っていく上でも、会社員時代に学んだことは役に立つと思います。

近藤:学生起業のメリット・デメリットでいうと、やはりメリットは色んな経験ができる上に、失敗してもダメージが少ないこと。デメリットは正解がわかりにくいことが挙げられそうですね。

中村:そうですね。でもいっぱい失敗をできるし、PDCAを回せるからこそ、「やりたい!」と思ってる人は就職せずに今すぐ起業していいと思う。

ーどんな人にGSEAに応募してもらいたい?

近藤:岳さんは、どんな人にGSEAに応募してもらいたいと思いますか?

中村:最初から世界を見ている人だと嬉しいなと思います。シリコンバレーの学生起業家や、イスラエルなどの小さい国の起業家は最初から世界を見ている。世界を見れているからこそ、世界で戦えるものを作ることができます。日本のマーケットはある種特殊で、日本語で守られているからこそドメスティックにローカライズしたほうが良いと考えて日本国内で止まりがち。

夢を追い続けるのであれば、最初から世界を見据えた上でやっていく人たちが増えたら嬉しいなと僕は思います。

近藤:おもしろい!GSEAは世界の学生起業家と戦える大会だからこそ、世界を見据えた起業家に参戦していただきたいですね。

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