【株式会社タイミー代表 小川嶺さん】後悔なく「自分はしっかり世に貢献できたな」と思えるように

日本のためになれる起業家になりたい、学生起業を志すまで

―起業を志したきっかけを教えてください

高校3年生で生徒会長になり、初めてリーダシップをとることを経験しました。予算をどのような企画に当てるのか考えたり、自分の持分のお金を何かに投資してそのリターンを得たりという体験をしてみて、すごく楽しいと感じました。予算配分以外にも、文化祭の来客数をどのようにして増やすのかを考えて、実際にそれを実行したら来客数が1.5倍になったこともありました。このときは、純粋にアイデアを出したり企画したりするのが楽しいと思ったんです。

当時から日本政策金融公庫のビジコンに出場もしていて、結果は3600件くらいの応募の中で20位くらいでしたね。そのとき僕は全国生徒会連盟に所属して活動していたこともあり、絶対優勝できる自信があったのでとても悔しかったです。当たり前なことだけれど「自分より優秀な人っていっぱいいるんだ」という気づきをそこで得ました。でも、このとき優勝できず悔しい思いをしたからこそちゃんとビジネスを勉強しようという気持ちになったので、今思えば優勝しなくてよかったです。

ビジコンに参加したのが高校3年生で、その年の冬に祖父が亡くなってしまいました。祖父のことをとてもリスペクトしていたので、祖父の生い立ちなどを聞き、曽祖父が牧場を経営していたことを知って、自分には実業家の血が流れているんだと思いました。その後、牧場はなくなってしまったのですが、もう一度小川家を復活させたいなと思ったのが起業のきっかけです。ただ小川家を復活させたり、有名な起業家になるのではなく日本のためになるような起業家になりたいと思いました。

大学に入学してからはサークルにも入らず、経営学部の300人全員に会って一緒に起業する仲間になってくれそうな人を探していました。でも、全然見つからなかったんです。そこで、自分で起業家育成団体を作りました。40人くらいで小さいビジネスをしたりしましたが、社会も知らないといけないので何社かインターンを経験して、その後に起業をしました。

ー高校3年生の1年間が濃い!起業に繋がる出来事が色々重なったんですね。(近藤)

―起業して今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

2018年8月にリリースして4ヶ月しか経ってない中で、3億円を資金調達できたことは嬉しかったです。VCにはだいたい断られて、残り1ヶ月でキャッシュアウトするくらいの時期で辛かった中、藤田ファンドに選ばれたことで生き延びることができました。だからこそ、あの3億円はインパクトがあった一方で、会社としてはぎりぎりの戦いをしていたと今考えると思います。このときの調達できた理由として、世の中に必要なサービスだということをとにかく訴え続けたことがあります。実際に自分で飲食店などに話を聞きに行き、ブラックバイトや過労死など現場で起きている課題を妄想や仮説ではなくリアルに伝えることで評価を得られたと思います。

―あのときの資金調達は課題解決の熱意を伝え続けることの集大成だったんですね!(近藤)

大変なことといえば、創業期に記者会見まで用意したのにアプリリリースが間に合わなかったことですね。いろいろ投資をして30社くらい記者も呼んで会見の準備は万端だったのに、その日にアプリがリリースできず管理画面を見せて「こういうイメージです。」といった発表になりました。アプリをリリースした後もクライアントやユーザーが少なく、うまくマッチングできないことがありました。ユーザーとのマッチングができなかったクライアントへは自分達が働きに行ったりもしていましたね。それにまだネットバンキングもなかったから、ユーザーに対しての支払いは自分で朝銀行に行って手作業で振込作業をするなど、当時の起業家生活は想像と違ったけど、いま思えば青春だったと思います(笑)。

早く見つけて、早く挑んで、早く失敗する。これこそが学生起業家のメリット

―小川さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

松下幸之助先生のようになりたいと思っています。世のため人のために働く、お客様第一の心というのは一生崩れてはいけない。自分のお金儲けよりも、死んだときに「自分はしっかり世に貢献できたな」と思えるようになれるかが起業家としての第一歩目だと考えています。起業家は何段階もステップがあって、それを超えるエネルギーを持ち続けないといけません。そのエネルギーの源になるのが世のため人のためであったり、自分のやりたいことと繋がっていることが重要だと思いますね。

※松下幸之助(まつしたこうのすけ)ー1894年11月27日〜1989年4月27日。日本の実業家であり発明家で、パナソニックホールディングス(旧社名:松下電気器具製作所、松下電器製作所、松下電器産業)を一代で築き上げた経営者。

―学生起業家のメリット、デメリットはなんだと思いますか

早いうちから行動できるのはとてもいいことだと思います。人生かけて挑むビジネスを早く見つけて早く挑んで早く失敗する。失敗してもそれを振り返ることができるのは、早くから行動したからだと思います。もうひとつは、無知の知。いい意味で業界や仕組みを知らないからこそできることがあるので。どんどん挑んで自分が考えていることを形にしていくべきだと思います。

デメリットは天狗になってしまうこと。お金も集まってくると、自分がかっこいいと思っちゃうんですよね(笑)。これは過去の自分に言いたいことでもあるけど、お金のありがたみを改めて知るべきだと思います。ファッションで資金調達するのではなくて、本質で頑張っていくというのが大切ではないでしょうか。

―ここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

世のため人のために自分が何をしたいかが見つかったタイミングで起業するべきだと思うので、急いで学生起業家になる必要はないです。やりたいことが見つかった時にやればいいと思うし、今それを見つけているのであれば全力でやり切ってほしいと僕は思います。

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【株式会社エアークローゼット天沼聰さん】謙虚にして驕らず、常に学ぶ姿勢を持ち続けたい

35歳で起業、社会人経験を経てからの起業に至るまで。

ー起業を志したきっかけを教えてください

元々、起業じゃないとダメだと強く思っていたわけではないです。海外の大学に通っていて、インターンなどもしていなかったので学生の頃は社会人という存在を遠く感じていました。大学を卒業してロンドンから帰国したときに将来何をしようかと考え、チームスポーツや仲間と一緒に何かをするのが好きなので、もしかしたら起業という選択肢もあるかなとおぼろげながらには思っていました。同時に、社会人って何をやるのかわからないし、スキルもないし、性格上緊張しいだから社長っぽいことはできないとも思いました。

起業だとしても、会社の中でのリーダーだとしても、リーダーシップを発揮して仕事をするスタイルは自分のなりたい姿だったので、それを身につけたいと思ったのが最初です。人前でかっこよくプレゼンをしたり、プロジェクトを管理したりリードできる人になりたいと思い、その経験を得ることができる仕事を考えた結果コンサル会社に就職しました。その後、10年近くコンサルファームで仕事をして、その間に起業しようという思いが強くなりました

 働いている中で、チームで仕事をするのが楽しいと実感し、自分達が本当に大事だと思うことをチームで進めていくという起業をしてみようと思いました。それもあり、エアクロの創業メンバーは私含め3人ですが全員コンサル時代のチームの仲間です。

コンサル時代に起業しようとは思ったものの、この時すぐには起業せず一度転職しました。起業した後のことを考えて、0→1はできたとしても1→100にするなど実業家として会社を大きくしていくのに必要な経験が足りないと思ったからです。具体的には3つあって、グローバルな経験を得ること、多種多様な人と仕事をすること、組織づくりを学ぶこと。これらを学びたいなと思いました。そう思っていた時に偶然にも楽天の求人があることを知り、転職しました。3年くらい楽天で色々なことを経験した後に35歳で起業しました

感染症の拡大からよぎる「サービスが悪になるかもしれない」という不安

ー起業してから今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

大変だったことはコロナですね。経営者としてもすごく考えさせられたし、事業としても苦戦しました。事業としては、ファッション業界には大打撃でしたね。外出しないからおしゃれをする機会が減る、そうするとお洋服を買うことが少なくなる、という感じでコロナの1〜2年で市場が十数%下がったんですよ。これって結構あり得ないことで、業界にとってのダメージが大きかったですね。

経営者としては、未知の感染症が拡大している中でお洋服のシェアリングというビジネスを継続していくことが本当にお客様のためなのか?ということにとても悩みました。もしシェアをすることによって感染症の拡大に繋がってしまったら、本質であるお客さまの幸せや感動体験のための事業とは逆のことが起きてしまいます。サービスがお客様にとって悪になるかもしれないというのは今まで一度も考えたことがなかったので、事業をどうしていくべきかの部分も含めて意思決定することが多くなりました

印象に残っている出来事は、サービスをつくって最初の資金調達をEOの仲間でもある寺田倉庫さんからしたことです。サービスのことを考え、倉庫会社さんとお仕事をしたいと思ってさまざまな会社に当たっていましたが、ひたすら断られていました。返却されてくる想定がなかったり、個品を管理することができなかったり、倉庫会社さんのシステム的に一緒にやるのが難しいのはわかっていました。そんな中、寺田倉庫さんは「一緒に業務フローから考えていこう」と言ってくださいました。初めは業務委託の予定でしたが、会長さんと社長さんに興味を持っていただき「会ってみたい」とおっしゃってくださいました。社長さんと会長さんとのランチでサービスと世界観に共感してもらうことができました。その時に、「サービスが回り始めて、世の中やお客さまの反応を見るのに1年間でかかる費用をうちが全部出すから、作りたい世界を見せてくれ」と言われたことをよく覚えています。

―めちゃくちゃかっこいいですね(近藤)

そうですよね。本気でサービスを作りたいと思っていて、サービスができた時の世の中に対する熱量と貢献したい心に対して、ちゃんと応援してくれる人がいるのだということを実感しました

絶対的な正しさは存在しないから常に学ぶ姿勢を持つことが必要

ー天沼さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

これは、僕が個人的に大切にしていることですが、時間を完全燃焼させたいということ。時間というのは、すべての人が平等に持っているもの。だからこそ、個人によってその瞬間の価値を変えることができるものだと僕は思っているので、すべての時間を自分が最高だと思える時間にしたいと考えています。

経営者としては、「謙虚にして驕らず」が一番だと思います。僕はすべての人がメンターだと思っています。これは海外経験から強く感じたことですが、すべての人が価値観も違えばバックグラウンドも違う。だからこそ、主観で見たらすべての人の考え方も価値観も正しいじゃないですか。そう考えると、絶対的な正しさっていうのはないですよね。正しさがない以上は自分自身が「この方がいいだろう」と思う正しさを晒し続けることが必要だと思います。そう考えると、これは素敵だなと思ったものは常に取り入れるようにしないと自分の成長が限られてしまう。人ベースで考えるのではなくて、どんな人からも学ぶことができるから、いつも学ぶ姿勢が必要だと思っています。だから、できる限り学びの機会を増やすというのは大事なんじゃないかと思います。

ー学生起業家のメリット、デメリットはどんなところだと思いますか

メリットは経験できる年数が多いことです。経営者としての年数が長いことは自分の立場から見ても羨ましいなと思います。早くから始めることでたくさん経験を積めるのと、最初のサービスでミスに対して過保護になりすぎなくていいのはとても強いと思います。例えば、私のように35歳で起業するとして、そこから数年または数十年試行錯誤するとなると人生上少し遅くなってしまいますから。そう考えると、なんでもできる時間の強さは羨ましく感じます。

一方で、組織作りとか社会人としてのノウハウがあまりないことはデメリットだと思います。メールのコミュニケーション、先輩との関わり方、営業についてなど社会人としての経験があるからこそわかることやできることもあると私自身実感しているのでそこはデメリットになってしまうかなと思います。

ーここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

僕は、自分が自信を持つまでインターンやスタートアップで先に経験を得ることをおすすめします。「何歳までに」とかの期限を決めたり、時間で考えたりするのではなくて、自分の状態で起業を決めるのがいいと思います。僕自身、自分が思っている地点に到達するまでは経験を積むことや学ぶことが必要だと思うタイプなので。それが学生のうちにできているなら学生から起業するべきだし、時間がかかるなら社会人になってもいいと僕は思います。

―なるほど!なりたい状態を先にあげて解像度を高めていくというのは確かにいいですね!(近藤)

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【ガイアックス スタートアップスタジオ佐々木喜徳さん】スタートアップとは、当たり前のことを当たり前じゃないやり方で解決するもの

フリーランスからガイアックスへ、そしてスタートアップスタジオの責任者に

ーガイアックスでのキャリアの経歴を教えてください

 ガイアックスには2007年ごろにエンジニアとして入社しました。当時ガイアックスは上場したばかりで、これから自社サービスをどんどんやっていこうというタイミングでした。その時のガイアックスのメイン事業はクライアント向けのSNS構築と運用の受託事業だったので、そこでインフラの構築や保守などエンジニアとしての業務をした後に、社内スタートアップ事業の挑戦を経てスタートアップスタジオの責任者に就任しました。

ー フリーランスからガイアックスへ、入社を決めた理由はなんですか。

 フリーランスの時は本当にフラフラしていました(笑)。ときには零細企業の役員になって会社を立て直したり、小さな芸能関係の会社の立ち上げメンバーとして活動したり、興味だけで生きていました。ガイアックスは学歴の強い人たちが入るイメージだったのに対し、僕はほとんど学歴がなくて。当時の派遣会社の担当の人に「多分、佐々木さんとガイアックス、合うからいってみれば?」と言われて面談に行き、まずはエンジニアの派遣社員としてガイアックスに潜り込みました。その時に「なんでもやらせてもらえそう」というのを感じました。僕はなんでも自分からやりたいタイプなので、そこで面白そうと思ったのが決め手ですね。

ー当時から自由な社風だったんですね!(近藤)

 はい。実際入社して思ったのは、とにかくサークルっぽい!僕はその時25歳くらいだったのですが、ガイアックスの社員は20代後半の若い層がメインで、同世代が多いこともあり、会社自体のノリに仕事感があまりなかったです。

ーそのノリとか雰囲気ってどこから感じたんですか?(近藤)

 最初に任されたプロジェクトが、社長と僕ともう1人の社員の3人で社内のCRMを改善するというものでした。上場企業の社長が、エンジニアの僕と一緒に解決方法や何を実装しようか、というのを普通にディスカッションしているってめちゃくちゃ面白いじゃん!と思ったことですかね。

※CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客と良好な関係性を築き、継続していくための施策やそれを実現するツールやシステムのこと。

ーいい意味でめちゃくちゃフラットだったんですね!(近藤)

「教えてあげているというより、共同創業者」として向き合う

ー   佐々木さんの思うスタートアップスタジオのいいところはどんなところですか

 スタートアップスタジオというのは、どうやって事業化していいかわからないアイデア段階のものを僕たちがリソースもお金も使って支援していくというものです。プレシリーズAとかシリーズAで、VCやCVCなど外部の投資家から資金調達ができる状態になるまで支援することに取り組んでいます。

 スタートアップスタジオの特徴は、実際に僕たちがリソースをかけて支援することです。例えばいいアイデアになるまでに事業検証が必要であれば、検証費用を出してあげる。いい事業アイデアに辿り着いたら法人の登記もしてあげるし、投資もします。会社を経営するために必要な経理や財務などの管理部機能も支援し、プロダクト開発が必要であれば無償でMVP開発もやっています。

ーお〜!教育機関に近いかんじですかね?(近藤)

 まさにやっていることは起業家教育ですね(笑)。事実、起業家を育てているけれど、僕たちのスタンスとしては「教えてあげているというよりも共同創業者」という感じです。全員が起業にたどり着くわけではないし、バリューアップするというのはもちろん難しいと思っています。ただ、挑戦する土壌が大事だと思っていて、「たくさん失敗するためにスタートアップスタジオを使っている」という考え方で挑戦したほうがいいんじゃないかと思っています。つまり、なるべく早くたくさん失敗して成功する事業にたどり着くための支援というのが僕たちのやっていることですね。

圧倒的な行動力で大人や社会を巻き込む力が大事

ー   ​​佐々木さんが考える起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」は何だと思いますか。

 いくつかあると思いますが、1つ極端な言い方をすると、「ちょっと頭おかしいかどうか」(笑)。当たり前を当たり前にやってもスタートアップじゃないなと思っていて、当たり前のことを当たり前じゃないやり方で解決するのがスタートアップ。一般常識から逸脱した考えができるかどうかというのは重要だなと思っています。

ー固定概念がないってことですね!(近藤)

 そうそう。表現方法はいろいろあるけれど、僕が好きな表現でいうと「ネジが外れている」「リミッターが壊れている」という感じ。あとは、圧倒的に行動力が必要。スタートアップは一次情報からいかにして事業を作るかが全てだと思うので、その一次情報を集めるのに行動力や行動量が必要だと思いますね。

ー実際に佐々木さんが支援をしたいと思う人や事業はどのような人や物ですか

 人のコミュニケーションや人の繋がりを作る場、人の繋がりから課題を解決しよう的な事業アイデアが大好きですね。だから、こういう事業アイデアを聞くとよだれが出ちゃう(笑)。

ー起業を目指す若手の支援をしていますが、支援をする中で心がけていることや思いなどありますか

 教えるコンテンツやフィードバックが本物かどうかというのはかなり意識しています。学ぶためとかじゃなくて、それが本当に事業アイデアを考えるプロセスなのか。何が良くて何が悪いのかの判断は、事業がうまくいくかどうかを基準にフィードバックすることを意識しています。起業ゼミでは中高生に教えたりもしているので、ついてこられなくなる子が出てくるときもあります。その際は、ついてこられない子のケアを学校の先生に実施いただきつつ、僕たちはついてくる子たちに本気で本物のフィードバックを続けるように努めています。

ー良いコンテンツのためにフラットに接するということですね。(近藤)

ー起業している学生にアドバイスや何か一言ありますか

 学生起業家は、固定概念がなくて柔軟な発想があるのが最大のメリットです。逆にアセットがないのがデメリット。でもそれはトレードオフだと思っていて、その持ってないアセットをどう補完するかが重要じゃないですかね。そして、補完するためには、いかに大人や社会を巻き込めるかという巻き込み力が重要だと思います。大人側としては、学生起業家を応援したいと思っている人はたくさんいるから、臆せずにどんどん接触していって巻き込んでいってほしいですね。

ーここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

 学生かどうかよりも、早いか遅いかの話だと思います。起業とか事業作りは経験の積み重ねによって成功確度が上がっていくはず。なぜなら、学びがあるから。そこから考えると、「起業したいな」の段階で出来るだけ早く挑戦したほうがいいと思います。そうすれば早く失敗して、早く学ぶことができるから成功確率の高い事業に挑戦できる打席が増える。つまり、学生だからというよりも早く挑戦した方が成功確率は上がると思います。あとは、学生だと失敗しやすいしダメージが少ないんじゃないかな。

ーたしかに。結婚したり、家庭を持ったりするとリスクのことを考えないといけないですもんね。(近藤)

 はい。結果、学生起業はメリットしかないと僕は思います。

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【さくらインターネット株式会社 田中邦裕さん】計画通りじゃなくても、面白い人生を送りたいのなら起業した方がいい

東京のインターネット体験コーナーで受けた人生で1番の感動

ー起業を志したきっかけを教えてください

 そもそも、最初は起業することは考えていませんでした。僕は”高専”と呼ばれる5年間通う技術系の学校に通っていて、3年生のときに「インターネットすげえ!」となって自分でサーバーを立ち上げてホームページを作りました。学内の友達のホームページを作ったり、友達のホームページを自分のサーバーに置いてあげるようなこともしていました。そんななか、学校のインターネットがグローバルに繋がるようになり、急に学外や国外からアクセスされるようになったんです。18歳のとき、東京のインターネット体験コーナーに置いてあるコンピューターから、舞鶴高専にある自分が立ち上げたWebサーバーにアクセスすることができたことに強烈に感動しました。これはもう通信とかコミュニケーションがガラッと変わるなと感じました。人生においてこれを超える感動はないと思いますね。

 しかしこのサーバーは勝手に立ち上げたものだったので、学校からクレームがはいってしまったんです。撤去しないといけない状況になったものの、「お金を払ってでも使わせて欲しい」というユーザーが出てきて、学外にサーバーを置かせてもらうことになりました。それまでは学校内に勝手に置いていたので無料でしたが、ちゃんと地元のプロバイダに置かせてもらうようになり、サーバー代などお金がかかるようになりました。このときは登記せずに個人事業主でやっていましたが、この出来事が起業のきっかけです。

ーなりゆきで起業したという感じですかね。(近藤)

 なりゆきですね。起業って目的として行う人と手段として行う人がいると思うのですが、私の場合は手段としての起業でしたね。

―起業して今までで1番嬉しかった出来事、大変だった出来事はなんですか

 嬉しいことはたくさんありますが、上場した時の鐘をみんなで鳴らしたことは印象に残っています。鐘は5回鳴らすことができるのですが、そのときにいた20〜30人を何人かずつに分けてみんなで鳴らしました。

ーめちゃくちゃ素敵ですね!(近藤)

 自分1人でやっているわけではなくて、みんなでやっているものなので、鐘もみんなで鳴らしたかったんです。上場って憧れたり目指したりするものでもあるけれど、上場したことがすごいというよりも、みんなでこの通過点を祝おうという感じでしたね。

 サーバー事業はどんどん新しいものが出てきて、ライバルも多いので戦略や戦術をたくさん変えてやってきました。大変だった思い出だと、ネットバブルが弾けて各所にお金が払えない事態になったことがあります。給与すら払えない状況でした。とにかく申し訳なくて、なんとかしようと思って開発した専用サーバーというサービスがぐっと伸びてなんとか事なきを得ました。

―田中さんが考える、起業家にとって「重要なこと」や「起業家の心得」とはなんですか

 人生において、コピーされないものの価値というのはすごく重要だと思っています。人脈は基本的にコピーされるものではないからそこに含まれると思っていて、そういう意味ではとても重要なことだと思います。あとは自分の熱量。これもコピーされないものですよね。そう考えると若いうちから始めるからこそ育成できるのって人脈なので、起業するのであれば人脈は大切にした方が良いと思います。

広い世界から俯瞰して見ることで気づきを得ることができる

ーGSEAのテーマが「誰よりも世界で勝負する経営者になる」なのですが、若いうちから世界をみることの大切さはなんですか

 僕は30代になってから海外に行くようになったのですが、10代とか20代のもっと若いうちに海外にたくさん行けばよかったと思います。やっぱり、大きな世界から中を俯瞰して見ることは大事なので。僕はネットワークを通して世界を広げることはできるけど、もっと広い世界を見ていくべきだと思っています。シリコンバレーなどに行くと規模感の違いを実感します。世界を見ると改めて、精緻に作り込んでいくことと広げていくことのバランスを取ることは重要だということを感じさせられます。

ーどれくらいの視野から自分や事業を見るかというのを若いうちに経験した方が良いということですね!(近藤)

 そうですね。そうすることで人生に深みが出ると思います。

リスクは少ないから、面白い人生を送りたいなら起業するべき

ー学生起業家のメリット、デメリットはなんだと思いますか

 若いときの方がやっぱりちやほやされますね(笑)。自分の芯をしっかりと持っていれば埋もれにくいし、リスクも少ないと思います。養う人がいなければ、5〜6万円あれば暮らしていくことはできるじゃないですか。だから、そういったお金の心配も少ないことは良い点ですね。失敗した時のリスクが少ないからこそ、どんどん挑戦できるのはメリットだと思います。

 デメリットは、世間を知らなかったり人脈があまりないこと。今だったら、「この経営者に相談したい!」と思ったら誰かしらのツテで相談することができたりしますが、学生のときはそうもいかないのでそこは大変かもしれません。

―ここまで色々お聞きしましたが、ズバリ学生から起業するべきだと思いますか

 就労経験に関わらず、すぐに起業していいと思います。お金がなくても起業はできるからどんどん立ち上げていった方がいいと思うし、就職と起業は別に対局にあるわけではないから、起業した後にどこかに就職するのもいいですよね。起業してその会社に勤めるのもいいし、「起業してこういう経験をしています」というのを就職試験で話すネタにするのも別にいいんじゃないかと思います。

ーたしかに、起業と就職は対局に考えられがちですね(近藤)

 自分がどういう人間かは考えた方がいいですけど、大企業で安定的に暮らしたいと思う人以外は起業した方がいいと思いますね。計画通りに人生を送りたいのか、計画通りじゃなくても面白い人生を送りたいと思っているのかを考えたときに、計画通りじゃなくても面白い人生を送りたい人であれば起業した方がいいのではないかと思います。誰にでも起業を薦めるというわけではなくて、そういうタイプならば起業の道もあるというだけの話です。

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【株式会社レアジョブ 中村岳 × 株式会社Unito近藤佑太朗】学生起業家ブームについて。起業家の心得とは? GSEA運営対談

ープロフィール

1980年生まれ、東京都出身。開成中高を経て、東京大学・大学院へ。情報理工学を専攻。その後NTTドコモに入社し、次世代通信の研究を行う。エンジニアとして働くなか、個人と個人をつなぐ新しいビジネスの立ち上げを考案。中高の同級生である加藤智久とともに、2007年にレアジョブを共同創業。2015年、代表取締役社長に就任。

ープロフィール
1994年生まれ。株式会社Unitoの代表。幼少期をルーマニアで過ごし、小学1年生の時に日本に転校。明治学院大学に入学し、国際交流活動を行う学生団体NEIGHBORを創設。その後クロアチアへ留学し観光と経営を学び、宿泊事業を行う株式会社 CARAVAN JAPANを創業。国内外含めて7拠点に広げるが、2020年1月に5社に5事業を分割売却。2020年2月「帰らない日は家賃がかからない家 unito(ユニット) 」をリリースし、それに伴い社名も株式会社Unitoに変更している。

ー中村さんの起業家としての心得は?

近藤さん(以下敬称略):岳さんの起業家としての心得についてお聞きしたいです。

中村さん(以下敬称略):僕が一番大切だと思うのは「諦めないこと」です。起業をしていると上手くいかないことがたくさんあるので、心を折らずに諦めないことがとても大事。成し遂げたい未来に向けて一歩ずつ学習しながら歩み続ければ、いつか必ずたどり着くから。諦めないことが起業においての心得ですかね。

近藤:「諦めないこと」は、周りの起業家でも言っている人が多いです。諦めないで、失敗も含めてたくさん経験を積む。経験値の積み重ねこそが、起業家にとって大事。だからこそ、早く起業をするという選択肢もありますね。

中村:そして「起業」からもっと大きくなるタイミングでの心得は「起業家自身がどんどん変わっていく」こと。どんどん変わっていかないと、会社は大きくなっていかない。起業家として役割を一歩ずつ変えていき、「起業家」が「経営者」になることが成長の鍵だと思っています。

ー近年の学生起業家ブームについて

近藤:岳さんは就職をしてから27歳で起業をしましたが、今の学生起業家ブームについてはどう思いますか?

中村:今の学生起業家ブームはすごくいい流れ!優秀な人にはどんどん事業を起こしてほしいと思う。僕は学生起業ではなく、NTTドコモに就職をしてからの起業でした。就職をしてからの起業で良かったなと思うのは、「正解」を知ってから起業をできたこと。成功している大きい企業で働くと、1つの正解例を知ることができるんです。他にも、人事制度や福利厚生など、制度面でも勉強になることがある。自分達で起業をして0から会社を作っていく上でも、会社員時代に学んだことは役に立つと思います。

近藤:学生起業のメリット・デメリットでいうと、やはりメリットは色んな経験ができる上に、失敗してもダメージが少ないこと。デメリットは正解がわかりにくいことが挙げられそうですね。

中村:そうですね。でもいっぱい失敗をできるし、PDCAを回せるからこそ、「やりたい!」と思ってる人は就職せずに今すぐ起業していいと思う。

ーどんな人にGSEAに応募してもらいたい?

近藤:岳さんは、どんな人にGSEAに応募してもらいたいと思いますか?

中村:最初から世界を見ている人だと嬉しいなと思います。シリコンバレーの学生起業家や、イスラエルなどの小さい国の起業家は最初から世界を見ている。世界を見れているからこそ、世界で戦えるものを作ることができます。日本のマーケットはある種特殊で、日本語で守られているからこそドメスティックにローカライズしたほうが良いと考えて日本国内で止まりがち。

夢を追い続けるのであれば、最初から世界を見据えた上でやっていく人たちが増えたら嬉しいなと僕は思います。

近藤:おもしろい!GSEAは世界の学生起業家と戦える大会だからこそ、世界を見据えた起業家に参戦していただきたいですね。

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