【株式会社Senjin Holdings 代表取締役 下山 明彦さん】どういう人生を送りたいかを考え、選んだのが起業家

東大進学、休学してインドへ瞑想修行、そして起業

―下山さんはメディアとかでも、超学生起業家みたいに言われることがあると思うのですが、どういった背景で起業に至ったのか教えてください。(近藤)

はじめまして、下山です。僕は今27歳で、起業家兼アーティストとして活動しています。東大生の時に立ち上げた仮想通貨に関する企業は上場企業に売却して、その後は藝大に行きました。今は、慶應の博士課程にいます。だから、まだ学生ではあるんです。

得意なのは、デジタルマーケティング、パーパス経営の役に立つ「アートを介した対話型ワークショップ」です。ワークショップは、経産省でもやっていて、大臣室には官僚の方々のアイデアを基に僕たちが制作したアート作品を展示してもらっていたりします。

他にも色々仕掛けていますが、そんな僕が起業したのは大学2年生の時です。
広島出身なんですけど、東大入るタイミングで、トップ層しか行かないような団体とかゼミとか、全部入ろうと思っていたんです。なので高2の終わりには東大の合格点を取れるようにしておいて、そこから部活を立ち上げて全国大会に出たり、ビジコンで入賞したりといった実績を積むようにしていました。

例えば同期に芦屋市の高島市長もいるんですが、彼は政治に行くし、他の人は官僚や国際機関で働くとかを目指す人とかがいて、でも自分は組織でトップ目指すみたいのはやりたくなくて、みんながどう進路を選択するかを見るためにも、一回休学するかって思って休学したんです。
それで、一年生が終わったタイミングでインドに瞑想修行に行きました。
そのタイミングで親から仕送り止められて…(笑)

それで生活費とか学費稼ぐかってなって、賞金稼ぐためにビジコンや投資コンテスト、小説や写真のコンテストで、賞金をゲットして、それを元手に、株や仮想通貨のトレードをしていたんです。その時に「オレ、めっちゃトレード勝てるな!」と思って、勝てる仕組みをつくれるんじゃないかって思ったんです。
その当時は、海外の情報を翻訳してみて分析するぐらいしか方法がなくて、でも、これ絶対に来るなっていうのもちょっとわかってたから、ビジネスチャンスなんじゃないかって思ったんです。
そうすると、メディアが絶対に必要だから、株式における四季報みたいなものの仮想通貨版が絶対に必要になってくるなと思ってそれを作ろうって思ったんです。
これが最初の起業のきっかけです。

―会社をどうしていきたいっていうのは最初からあったんですか?(近藤)

最初は、数年でM&Aさせるところまで決めてはじめたんです。
2年とか3年で上場することは構造上できないので、数年でM&Aして、ということは決めていました。それがいいことか悪いことかはわかんなかったけど、起業するときってどうなるかなんてわかんないじゃないですか。
僕は、人間としてどういう人生を送っていきたいっていうのが先にあって、手段としての起業家があると思ってます。目的をどう設定するかってスゴく大事なんだけど、意外とみんな考えてなくて、「起業の科学」はあるんだけど「起業家の科学」がないなって思うんです。

―仮想通貨のメディアをつくって売却して、今はマーケティングやアートコンサルの会社をやっていると思うのですが、今まで一番大変だったこと、嬉しかったことを教えてください。(近藤)

大変だったことは…普通に殺害予告とかきて…今は笑い話なんだけど(笑)
仮想通貨の投資メディアで、最初の頃は仮想通貨の詐欺を検証する記事をやったんです。そうすると、裏で危ない人達がいたんだと思うんだけど、問い合わせフォームとかにそういう殺害予告がきて…夜なんて背後を気にしながら歩いてました。
最後は、自分達とは関係なく普通に詐欺で逮捕されちゃってましたけどね。(笑)

―怖いもの見たさというか、学生ならではかもですね。(近藤)

嬉しかったことは、すごくたくさんあります。仮想通貨のメディアを売却した時に、お金は入ったんだけどそれは本質的な嬉しさではなくて、それまで一緒にやってきた人達と、慰安旅行をやったんです。お世話になった先輩とかインターン生とか200人くらい呼んで、売却っていう区切りはついたけど次はこういうチャレンジをしていきますみたいのを各々が喋ったんです。
あそこでちゃんとみんなで集まってやったのはよかったなぁって思ってます。

生まれ変わったら子供のうちに起業する、早く始める方がいい

―今は絵を描いたりしてますよね、これからのビジョンを教えてください。(近藤)

まず、絵を書いてるんじゃなくて、一万年くらい残るものを作りたいなーと思ってるんですよね。そもそもの人生におけるビジョンで言うと、まず前提として不老不死を考えているんです。だから僕の目標ってめちゃくちゃ長期なんです。

人類がずっと大切にしてきた、美しさを追求するということに向き合おうと思ったんです。

事業と作品を両方作りながら未来について考えたり、「こういう世界だと絶対面白いでしょ!」というのを実現していきたいなと思い、東京藝大を受けたんです。

今までいろんな事業を作ってきて、成功したり失敗したり(成功は少なく、失敗は多い)を繰り返してきたのですが、やっぱり資本主義の流れに乗せることでできることは大きい。一方で、だからこそ出来ないこともたくさんあるな、とも。

ヨーゼフボイスというアーティストが提唱するコンセプトに「社会彫刻」というものがあります。

雑に説明すると、「芸術こそ進化にとっての唯一の可能性で、人間みんなアーティストだし社会を変革することができる存在。その中で拡張された芸術概念として、アートや政治、ビジネスや学問など様々な分野で社会を彫刻していこうぜ」という話で。

僕自身も社会を自分が望む在り方として彫刻するために起業したし、今も事業を作っています。

一方で、その限界もあります。例えば、5年前から投資家として、経済学を学ぶ学生として触ってきた仮想通貨。その技術が創り出すであろう未来を確信し、CoinOtakuを立ち上げ、国内の仮想通貨投資の発展に少なからず寄与した自負はあります。

でも、僕が当時夢想した世界観に到達するまでにかかる時間は思った以上に長かったし、僕自身も未熟だった。

まだ決済にbitcoinが使われるようにはなっていないし、クリプト系のゲームがヒットしているわけでもない。

魔王を倒してもらえるアイテムを日本円に替えて生活していける世界、「ゲームばっかりしないで現実を見なさい!」と親から言われない世界には、まだまだ到達していないわけです。

一方で、その世界を想像させることはできる。

そのポテンシャルを秘めているのが、アートであり、デザインなんです。

基本的なビジネスや商業的なデザインは、Probableな未来の領域を念頭に作られています。


一方で、もっと現実離れしたPlausibleな未来やProbableな未来を思索し、今とは違う政治や経済の未来を想定することによって初めてPreferableな未来、あるべき社会を措定できるのではないか、ということです。

デザインやアートは、多かれ少なかれ未来に目を向けるものです。
そして良くも悪くも、ビジネスと比べ資本主義に結びつく必然性が薄い。

だからこそ、現実からぶっ飛ばした未来予想図から、改めて現在の写像を創り出すことができるのではないか。

そしてその未来と現在の中点に事業を作れば、今の僕の力では成し得ない、アートでもビジネスでもギリギリ届かない新しい形の社会彫刻ができるのではないかという仮説です。

そこで、今は自分の事業だけでなく、大手企業や省庁、自治体の未来をテーマに作品を制作したりしています。そこから組織開発をしたり、新規事業開発をしたりすることもあります。

冒頭でもお話ししたように、直近だと経済産業省をクライアントに研修や作品制作を行いました。大臣室にも作品を飾ってもらっています。

そして、次のクライアントはASEANなんです。ASEAN各国のリーダーが集うサミットに招聘されていて、そこで政策提言を行います。ここでも主催者の方々に興味を持っていただいて、作品制作やワークショップを実施させてもらうことになりました。

こうやって、より大きな価値を出せる共同体と、ビジネスやアートを通して世界を加速させ続けていきたいですね。

―最後に、学生起業家についてですが、起業は早いほうがよいと思いますか?(近藤)

僕は結構、運がよかったと思っていて、自分で頑張ったのもあるけど、どんなに優秀でもうまくいくのは数十人のうち数人で、統計的に考えれば合理的ではないって思います(笑)
ただ、面白いなって思ったことがあって、40歳から起業した人の方が成功率が高いって記事に、20代で起業した人の成功確率が0.1%、40代で起業した人の成功確率が0.2%ってあったんですよね。誤差じゃない?って思って(笑)
0.1%の確率を上げるために20年修行するとか、僕には絶対できないなって。

もし僕が生まれ変わったら、4歳くらいで起業すると思いますし、作品つくってると思います(笑)やりたいことはすぐやった方がいいですね。

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