【サグリ株式会社 代表取締役CEO 坪井 俊輔さん】 自分の軸としての「旗」を見つける

世界の農家の現場を目の当たりにしたことをきっかけに起業

― まず起業を志したきっかけを自分のやっている事業内容も含めて教えてください。(近藤)

我々は世界の農業・環境課題に対して衛星データとAIをかけ合わせた農地の見える化を通してその解決に向けた事業を進めています。

創業のきっかけとしてはアフリカのルワンダにいた経験が大きいです。
もともと宇宙教育の会社で働いていて、そこから事業を進める中で海外でも教育する機会があり、ルワンダを訪れた際に中学校や高校に行けない子たちに出会いました。

彼らは親の手伝いのために中学卒業後すぐに働きはじめ、その大半が農家をやっています。そしてその農家の状況がきわめてアナログなものであることを知りました。この状況に対して、無償で公開されている衛星データがあれば解決できると考えました。

そうなんですね!とても面白いです。もう少し事業内容について詳しく教えてください(近藤)

まず我々が最初に開発したのは農家向けのソリューションで、農家さんの今の土の状況とかいつが収穫の適期かを提供していました。

ただコロナの影響とかもあって一度行政に戻って、そこから再度農業現場にとどけるソリューションを提供しています。

ー なるほど。事業は世界的に展開されているんですか?(近藤)

はい。東南アジア、インド、アフリカ、中南米における計12〜13の新興国にフォーカスしていて、直近だとウクライナにも事業展開をしています。ウクライナも実は欧州の中ではモルドバに次いで貧困な国で、創業の原点にも関係していますが新興の国における農業を改善するための情報を提供しています。そしてその中で先進国や他の企業を巻き込んだ上で収益化を図っています。

東南アジアであれば、シンガポールに拠点を持ちながら、ベトナム・タイ・カンボジア・フィリピン・インドネシアを中心としていて、他にもバングラデシュやインド、アフリカだったらケニア・タンザニア・エチオピア・ルワンダ、中南米はブラジル・ペルー、そしてヨーロッパだとウクライナに展開しています。
これらの地域では実際に人を派遣している国もあれば、業務委託的に人材派遣する国もあります。あと、まだ人はいないけど、サービスを提供している国もあります。

我々のサービスの特徴は地球上を周回している衛星のデータを使っていることで、どの場所でも理論的に解析して情報をお届けができることが強みなんです。
もちろん現場のチューニング等の作業もあるので地上データも整える必要はあるんですが、わざわざ人をたくさん雇って市場をとっていくというわけではなく地球の裏側であっても解析した情報をインターネットを通じて渡せるというのがメリットだと言えます。

事業の割合としても、そもそも農家の数が日本よりも海外の方が圧倒的に多いので、海外の方が事業展開の割合も大きいです。

ー 若い頃に起業されたと思うですが、経営を進めてきた中で一番嬉しかったことと一番大変だったことを教えて下さい(近藤)

現場に行っている時は楽しいし、その現場が少しでも改善されていると知ると喜びを感じます。

国内・海外の農家さんそれぞれに色々な課題があって、全てが解決しましたっていう状態までには時間がかかるんですが、そういった意味で言うと課題全体の中のここの部分っていうのはこういう課題があって、それが改善されているっていう瞬間を見られるのが嬉しいですね。

一方で辛いことは例えば信頼していた方に裏切られることもありますし、よかれと思って事業をやっているのに、競争原理が働くことで事業を潰してやろうと脅迫的なものを受けることもあって、心が傷つくこともありますね。

最初からグローバルや宇宙に視点を向けていると思うのですが、そこに対して心得・モットーとかはあるんですか(近藤)

そうですね、そもそも私としては日本とか海外というのは国境で隔たれているだけととらえています。同じ人で、地球という同じ船に乗っているわけですよね。

農業・食というテーマ、気候変動という課題は共通な訳で、もし仮に私が日本だけを見ていて、それを解決しようとした結果、他のところが疎かになってしまってとなると、結局全体としてはマイナスです。やっぱりやったことに対して貢献できたかどうか、というのは悩むと思うんですよ。
だとしたらそこの隔たりは取っ払って、多少大変かもしれないけどグローバルで進めるっていうことが創業の原点からも考えて、自然なものなんですよね。

ー 最初から隔たりというものがなかったということが一番大きなところですよね。(近藤)

はい。「日本から世界へ」というのはストーリーとして美しいと思うんですけど僕は創業してから半年以内にインドに3か月行っていましたし、ほぼその時期っていうのはスタートアップとして右も左も分からないじゃないですか。だからそこはもう前提としてあったんですよね。

日本に対しても時間を使うことはもちろんあるんですけど、日本と海外というのは現状それぞれ課題があって、それが進んでいくと「人類と地球」という共通化された課題に直結します。
我々はインパクトレポートを発行したりするんですけど、今作っているものはそれぞれのソリューションの先に生み出すインパクトが、どんどん結びついて共通化していくんです。だから一見違ったソリューションも実は結びついているんです。

ズバリ、起業は早くからした方がいいのか、研究者や企業に進むなど他の道に進むのが良いか坪井さんはどうお考えですか(近藤)

まず起業かどうかというよりも何をしたいかという「旗」を探すことが重要で、その旗探しに時間を費やすことが大切ですね。

私も若い頃にバックパッカーをしたり、そこで出会う人や環境から感じることがたくさんありました。
最初から良いことを見つける必要はなくて、これだってまずは旗を決めて進み、それが違った時に方向転換していく繰り返しの中で起業が選択肢にあれば選べばいいと思います。

もちろん若い頃の起業はリスクがとても大きい訳ではないけど、ビジョンもなくて周りに影響された結果としてお金持ちになって、「私は何をしたいんだっけ」となる人は多いなと思います。
それよりも「自らが夢中になれること」が、自分の軸を作るという意味で重要なのかなと考えていますね。

ー 最後にさまざまなハードルがあるGSEAの中で最初から世界を目指そうとする学生たちにエールをお願いします。(近藤)

一番私が大切だと思うのが、人生という限られた時間の中で何に時間を使いたいのか明確に持つことだと思います。GSEAとかのコンテストはすごく華やかな場であり、同期とも仲良くなれる反面、競争的な場でもあります。ただその順位がどうであれ、その機会がどうであれ、自分の軸が定まっていれば本当に強いと思います。

そこからお客さんや課題解決につながって想いが届くと思うので、その機会の1つとしてGSEAを捉えることが重要だと考えています。

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