【株式会社ネットマーケティング 元代表取締役社長、現エンジェル投資家 宮本 邦久さん】0→1を作ることに満足せず、経営者として組織を作る

幼い頃から見てきた父の背中を見て、少年時代から起業を決意

― 宮本さんが起業を志した理由を教えてください

僕の場合は父親が自営業をやっていたという家庭環境が大きかったと思います。政治家の息子が政治家になるように、自分の稼ぎは自分で稼ぐという父の背中を見てきたことが一番の影響だったんじゃないかと思います。父は個人事業主であったので正確には経営者ではなくて商売人です。僕のモチベーションも商売繁盛にありました。

ー 上手い経営を目指す経営者と商売繁盛を目指す商売人との違いについて詳しく教えてもらえますか?

商売人っていうのは売上や利益に注目して個人でやっていくもので、経営者っていうのは人を使って組織で戦っていくものなので個人と組織の違いは大きいのかなって思います。

具体的なキャリアについてお聞きしてもよろしいですか?

まず「商売とは」みたいなものを学ぼうと総合商社を選びました。しかし入社して思ったことは、総合商社ではどんなに頑張っても、たとえ新規事業を成功させても新聞に自分の名前が若いときに載ることはないなって思ったんですよね。こう考えた時に短い人生の中で、20代という若い時から勝負できるIT業界で活躍したいなと思い、起業をしました。

起業した後、今までで一番嬉しかったことはありますか?

中学生の時に「ウォール街」という映画を見て、投資家に憧れて、起業して上場して会社を売却し、その資金を元にエンジェル投資家をやりたいと夢見ました。
なので上場を目指して会社を作って、その会社の社員採用の人材募集をする際にも、一緒に上場しようと言って仲間を募集をしたわけなんですが、それが実現した時がやはり一番嬉しかったなと思います。

夢である上場に向けて、会社が大きくなるとともに自分自身も成長を実感する

― 逆に起業してから大変だったことはありますか?

5つあります。

1つ目は売上の壁ですね。僕の場合1年目の売上は3億円だったのにも関わらず、3年目に3ヶ月間売上が0になっているんですよ。一度上がった売上が0になるっていうのは相当メンタルを削られましたね。この時に五十棲剛史さんの「売上2億円の会社を10億円の会社にする方法」という本に出会います。この本と出会えて、個人事業主のままだと上場できない、つまりちゃんとビジネスモデルを作り、経営者になりなさいと突きつけられたように感じましたね。

2つ目は、ビジネスモデルを作って売上が10億円くらいになった時のことで、僕と経営陣全員が対立してしまったことですね。組織の壁が生まれてしまったことです。この時、自分は上場したいのかオーナー企業をやりたいのかもう一度考え直して、上場したいんだって改めて思いました。そこできちんと権限委譲してチームで結果をあげるように切り替えないといけないなと思いました。
上場のために広告事業以外の新たな事業を作り上げる必要があったので、広告事業はチームに任せて、自分自身は第2の起業というか、新しい事業を立ち上げようと思い始めました。

3つ目は、上場に直結する自社メディアとして作った第2の事業がOmiaiになるんですけど、これがヒットして2015年の8月に東証マザーズの上場承認されたものの、残念ながらこの上場承認が取り下げになったことです。ここからの気持ちの立て直しや、売り上げや利益の立て直しって言うのが結構大変だったわけですね。幸いにも良いメンバーに恵まれて会社自体は調子が良かったので、翌々年の2017年に再チャレンジして上場できました。

4つ目は、2021年の話になるんですけど、Omiaiの個人情報が漏洩してしまったことです。全国ニュースにもなって、会社には通常のオペレーションの数百倍以上の問い合わせが殺到し、自宅には怪文書も届いたりして、SNSで誹謗中傷を受ける芸能人の気持ちがわかりました。街を歩く全員が自分を攻撃しているかのような疑心暗鬼に落ちいって、めちゃくちゃしんどかったですね。

5つ目は、僕が社長を退任しようとした時に後任問題が起きて、社内が分断しかけたことですね。
そんな時に僕たちの会社が手掛ける婚活恋活事業をベインキャピタルさんから、広告事業をMacbee Planetさんから、同じタイミングで一緒にやりたいと言われて、事業を分割するというシナリオが見えたんです。
方向性の異なる2つの事業が、結果的にすごく偶然ではありますが、それぞれうまく話がまとまり、組織としても内部分裂を防ぐことができました。

― お話は変わるんですけど、起業家・経営者の心得みたいな感じに近いんですが、投資する側としての企業の理想像と経営する側としての企業の理想像っていうものの違いを教えていただきたいです。

僕はよく起業家、事業家、経営者っていう言葉遣いをするんですけど、起業家っていうのは、0を1にする人だと思っていて、事業家っていうのは1を10にする人で、経営者っていうのは10を100にする人だと思っています。

そして多くの起業する人は、この起業家に属しているわけなんですけど、0から1で満足してはいけないなと思います。成長が止まってしまう企業っていうのは結局のところ1から10にするところの組織が作れてないんですよね。また10を100にするためには営業、マーケティング、開発、管理部門などのセクションごとに一つ一つマネジメントする経営が必要だなと思っています。

― 若いうちから世界を見ること、世界を意識して起業することって大事だと思われますか?

もし僕が若い頃に戻れるならスタンフォード大学に進学しますね。やっぱり起業するならアメリカかなというふうに思いますし、世界を見て起業をすべきだなって思います。
一方で学生起業の是非については、僕はあまり年齢で区切って話をするべきでないと思っていて、そもそも起業に向いている人と向いていない人がいるんですよね。
向いてない人は学生であろうが、社会人であろうがやらないほうが良くて、向いてる人はいつやっても成功すると思います。だから成功する人はいつスタートしても大丈夫なので、そういう意味では早いほうがいいだろうっていう感覚なんですよね。年齢って枠ではあまり考えたことはないですね。

最後に起業したての方や学生起業家含めていわゆる若手の起業してる方しようとしてる方に対してなにかメッセージがあれば一言いただいてもいいですか

もし18歳未満ならアメリカの大学に行けって絶対言いたいですよ。20歳以上でもそう言いたいですね。
NVIDIAとかも台湾の会社ですけどアメリカで成功してるじゃないですか。
日本の起業家もアメリカに行って、アメリカでパートナーを探して、投資家を探して、アメリカで起業してグローバルに向けてサービスを展開するっていうのが、大きく成功するための王道だと思っています。

SNSで記事をシェアする

一覧に戻る
ENTRY
EO GSEA

ENTRY2023年度出場者募集中