海外生活が長かったからこそ見えた日本社会の課題
―起業のきっかけとAI CROSSについて教えてもらってもいいですか?(近藤)
海外生活が長く、小中高とドイツで、大学だけ慶應に行き、ドイツの会社に入ったんです。アメリカに行きたかったので、ベンチャーに入ったのですが上手く行かず、いろんな技術のスタートアップと提携して日本に独占販売権を持ってくるビジネスをしていたんです。その時に、副業で富裕層向けにワインを売るっていうビジネスをやって、それが事業を立ち上げた1社目です。
向こうで、結婚して、出産して、日本に帰ってくることになったのですが、帰ってきた時に、カルチャーギャップが相当激しくて、とても働きにくかったんです。
海外にいると、アイデンティティをすごく意識して、日本が好きになるんですよね。もう結婚もしたし、今度は日本に骨を埋めようみたいな感覚になった時に、自分が貢献できることをやりたいなって思って、生産性を向上することで私みたいな女性が、働きやすい国にすることを目的としたビジネスを立ち上げたっていうのがきっかけです。スマートな社会をっていうので、スマートワーク、スマートライフで、ビジネススタイルをスマートにしていき業務を効率化して、アウトプットの最大化を図ることを目指しています。
―もともと起業家になりたいという思いやきっかけはあったのですか?(近藤)
全くないんです(笑)
なりゆきっていうか、自分で全部決めて自分でやるっていうことじゃないと好きじゃないんだろうなっていう思いはあって、リスク取ってやるっていうのが好きなんだろうなっていうのは、後から気づきました。
―2015年に創業して、7-8年で上場されてますが大変だったことや嬉しかったことなんかのエピソードがあったら教えてもらえますか?(近藤)
私、割りと強いんですよね(笑)
生まれが福岡で、それから東京、ドイツ、ニューヨーク、シアトルって、転々としているんです。飽きっぽいのもあるんですが、ずっと同じ環境にいたことがないから、変化が当たり前になっていて、辛いこととか感情の起伏があまりないんです。
もともとそういうのに対応する体質になっているみたいです。(笑)
強いて言うなら、以前の会社で事業を分社化した時に、システムをつくったエンジニア4人のうち3人が辞めて、競合をつくっちゃったんですよね。後から考えるとあの時はしんどかったけど、その時はもう必死でハードワークだったなっていうのはあります。
よかったことは、やっぱりIPOです。
今でも覚えていますけど、メインの担当部長に「できると思わなかった」って後から言われたくらいボロボロだったと思います。
よく出来たなって感じです(笑)
あの時は、ここ数年で一番泣きました。引っ張ってきたナンバーツーがスゴい男泣きしていて、それを見てよかったなって私も泣いちゃいました。
多様性を受け入れることで組織は強くなっていく
―すごくいい話ですね!
最近は女性起業家も増えていますが、起業家にとって女性だから男性だからってあると思いますか?(近藤)
今はだいぶ男女平等みたいなのありますけど、なんだかんだ女性の負担は多いと思います。
子育てや育児の時間の配分もそうじゃないでしょうか。
女性を贔屓するのは逆贔屓でしょ、みたいのもありますけど「女性なのに頑張ってるよね」とか「女性なのにスゴいね」って言われ続けること自体が、そういうレッテルを貼られてるんだなって思います。
―学生起業家のメリットやデメリットについてどのように思っているか教えてもらえますか。(近藤)
メリットは、あれですよね…無謀というか、若ければ若いほど無茶ができると思います。さすがに今は上場したので、チームをつくって戦略やリスクを考えてやっていますけど、私自身が、考えるより飛び込んでやっていくタイプだったので若い時に経験を積めるっていうのはいいですよね。
あとは100%時間を注げる、家庭とか仕事もないので、そういう意味ではメリットあると思います。
デメリットは、私も日本に帰ってきた時に感じたのですが、見えないマナーみたいなものがあるかなって感じます。
特に、大手との取引とか自治体とか政府とか、そういうところと取引しようと思うと、難しいところがあると思います。
あとは、だいぶ減ったのかもですが、一度失敗するとレッテルを貼られたりとかですかね。
―最後に、欧米の方が男女平等って進んでいるんじゃないかと思うのですが、日本の中で女性起業家が必要なのか、どういうマインドセットをみんなが持ったらいいかってありますか?(近藤)
女性起業家は絶対に必要だと思います。
人口がこんなに減っているのに、女性の労働力を使わないっていうのはないと思います。
これから何が起こるかわからない時代だから、ポテンシャルを引き出すというか、その人の持っているポテンシャルを引き上げた上で、似たような人たち同士より、色んな人が掛け合わさった方が未知のパワーが出てくると思うんです。最初の立ち上げは少人数で、阿吽の呼吸で行けても、大きくしていく中で色々な考え方、人材で多様性を入れるほうが大きくなっていけると思います。
女性がトップでも男性がトップでも、いい悪いはないと思いますが上場企業で見ると、女性のトップは1%しかいないんです。
昔は、お父さんが働いてお母さんは家にいるっていう家庭が多かったので、女性が活躍って頭の理屈でわかっていても、価値観でなかなか変えられないんですよね。
そこは一定の時間がかかるのはしょうがなくて、今の世代の方たちが大人になったらだいぶ変わるだろうなって思います。
色々な価値観の人がいて、子供を産みたい人も産みたくない人もいて、それを社会が許容して認めあえる形になっていくといいかなって思っています。